「使っていない土地を、コンビニやドラッグストアに貸さないかと持ちかけられた」。幹線道路沿いに土地をお持ちのオーナー様から、よくいただくご相談です。
店舗への土地の貸し方には、主に事業用定期借地と建築協力金方式の 2 つがあります。どちらも初期の持ち出しを抑えて始められる点は同じですが、建物の持ち主が違うため、負うリスクも、税金や相続の扱いも、契約が終わったあとの土地の姿も変わります。
2 つの方式のしくみ
事業用定期借地:土地だけを貸す
オーナー様は土地だけを貸し、建物は借主である企業が自分の費用で建てて所有します。オーナー様の収入は地代です。
借地借家法にもとづく契約で、期間は 10 年以上 50 年未満。契約は公正証書で結ぶ必要があります。期間が満了すると、借主は建物を取り壊して更地に戻し、土地を返します。契約の更新や、借主から建物の買取りを求められることはありません。
建築協力金方式:オーナー名義の建物を貸す
出店する企業が建築費を「建築協力金」としてオーナー様に預け(無利息の融資にあたります)、オーナー様はその資金で自分名義の店舗を建てて企業に貸します。オーナー様の収入は建物の賃料です。
建物が完成すると、建築協力金は賃貸借契約の保証金に切り替わり、毎月の賃料と相殺する形で企業に返していきます。契約期間は 15 年から 20 年とすることが多く、銀行から借入れをしなくても、場合によっては自己資金なしで建物を持てるのが特徴です。ただし、造成費など一部の費用はオーナー様の負担になることがあります。
比較表
| 比べる点 | 事業用定期借地 | 建築協力金方式 |
|---|---|---|
| 建物の持ち主 | 借主(企業) | オーナー様 |
| オーナー様の収入 | 地代 | 建物の賃料(協力金の返済分と相殺) |
| 収入の水準 | 低め | 高め |
| 初期の負担 | ほぼなし | 協力金でまかなえるが、一部負担が出ることもある |
| 契約期間 | 10 年以上 50 年未満 | 15〜20 年が多い |
| 契約の形 | 公正証書が必要 | 建物の賃貸借契約 |
| 固定資産税 | 土地のみ | 土地と建物 |
| 建物の修繕 | 借主が負担 | 契約で決める(オーナー様負担の部分が出やすい) |
| 相続税の評価 | 貸宅地として評価が下がる | 貸家建付地・貸家として評価が下がる |
| 途中で撤退されたとき | 更地に戻して返してもらう約束がある | オーナー名義の建物が残る |
| 契約が終わったあと | 更地で戻る | 建物が残る(使い続けるか、取り壊すか) |
事業用定期借地のメリット・注意点
メリット
- 建物のリスクを負わない。 建物は借主のものなので、修繕費も固定資産税も、建物にかかる費用はかかりません。
- 土地が更地で戻ってくる。 期間が満了すれば、取り壊し費用は借主の負担で更地に戻ります。次の世代が土地を別の用途に使う道が残ります。
- 手間が少ない。 管理するのは土地だけです。
注意点
- 収入は建築協力金方式より低くなりがちです。 建物を持たない分、受け取るのは地代だけです。
- 期間が長く、その間は土地を自由に使えません。 30 年、40 年といった単位で、ご家族の将来の計画とすり合わせておく必要があります。
- 途中解約の取り決めを確認します。 借主が途中で撤退したい場合の違約金や、更地にして返す義務が、契約書にはっきり書かれているかが大切です。
- 契約は公正証書でなければ効力が認められません。 公証役場での手続きが必要です。
建築協力金方式のメリット・リスク
メリット
- 収入が大きい。 土地だけでなく建物の賃料を受け取れます。
- 借入れなしで建物を持てる。 建築費は協力金でまかなうため、銀行融資を組まずに始められる場合があります。
- 相続税の評価が下がる。 建物を貸している土地は「貸家建付地」として、建物は「貸家」として、それぞれ評価が下がります。
リスク
- 企業が途中で撤退すると、建物が残ります。 店舗向けの建物は造りが特殊で、次の借り手がすぐに見つかるとは限りません。返し終わっていない協力金をどう扱うか(企業が返還を求めないのか)を、契約で必ず決めておきます。
- 建物の費用がかかります。 固定資産税、契約で決まる範囲の修繕費、将来の取り壊し費用はオーナー様の負担です。
- 土地に抵当権を付けにくくなります。 土地に抵当権などが設定されていると、企業は不安に感じて借りてくれません。契約の途中で設定すると、オーナー様側の契約違反になることもあります。
- お互いの信頼関係がすべての前提です。 契約期間が長く、途中で条件を見直す場面も出てきます。相手企業の経営状況や出店方針も確認したうえで判断します。
向いている土地・向いているオーナー
事業用定期借地が向いているケース
- 将来、ご家族が土地を使う可能性を残しておきたい
- 建物の管理や修繕にかかわりたくない
- 収入は控えめでも、リスクを小さくしたい
建築協力金方式が向いているケース
- 収入を重視したい
- 相続税の評価を下げることも目的の一つ
- 撤退されたときに建物を別の用途に使う、または取り壊すための備えがある
どちらの方式も、立地が企業の出店基準に合っていることが前提です。幹線道路からの見えやすさ、出入りのしやすさ、敷地の広さと形、周辺の商圏によって、そもそも話が来るかどうかが決まります。
まとめ
事業用定期借地は「収入は控えめでも、リスクが小さく、土地が更地で戻る」方式。建築協力金方式は「収入は大きいが、建物のリスクをオーナー様が負う」方式です。
どちらが得かは、土地の条件、ご家族の将来の計画、相続まで含めて考えないと決まりません。企業から提示された条件が妥当かどうか、契約書のどこを確認すべきか、比較の材料をそろえるところからお手伝いします。
税金や相続税の具体的な金額は、個別の事情で大きく変わります。最終的な判断の前には、税理士などの専門家にもご確認ください。
土地活用の全体像は土地活用のご相談、相続との関係は相続を見据えた土地活用もご覧ください。